オフィスの生産性を上げる施策として、IoTを活用する方法が注目されています。さまざまなIoTによって高度に効率化された「スマートオフィス」という言葉も近年、よく耳にするようになりました。しかし、そもそもIoTについて詳しく知らないという方も多いでしょう。今回は、IoTの基礎知識から、導入時のフローなどまで詳しくご紹介します。
IoTとは
IoTという言葉を最近よく耳にするようになりました。IoTとは、「Internet of Things」、つまりモノのインターネットという意味を持っています。インターネットはもともと、コンピューター同士をつなぐために開発されたものです。そのため、これまではPCやサーバーといった、IT関連機器のネットワークとして活用されていました。
IoTとは
近年ではPCやその周辺機器だけではなく、スマートフォンやタブレットが流通するようになりました。そのため、インターネットに接続できるテレビ、デジタルカメラ、デジタルレコーダー、スマートスピーカーなどのデジタル情報家電が増えています。
デジタル情報家電を通して、映像や写真、音楽や音声、文字情報などのデータはインターネット上で様々な人や場所に届けられるようになりました。このように、今までインターネットにつながることがなかったモノをインターネットにつなぐことをIoTといいます。IoTに定義はなく、幅広い応用例が想定されます。
IoTを導入する前に
何の用意もなしにIoTをオフィス内に導入できると考える人は多いです。しかし、導入するまえにしっかりと環境を整備しておく必要があります。ここでは、IoT導入前に考えておきたいいくつかのポイントをご紹介します。
通信環境の整備
IoTはインターネットを駆使して動きます。そのため、オフィス内の通信環境がきちんと整備されていなければその効果は半減してしまうどころか、そもそもIoTを導入できないという事態になりかねません。IoT製品を導入する前に、しっかりとオフィス内の通信環境をチェックしましょう。
具体的にはPCの導入という方法がもっとも身近で効果的な対策方法です。例えば、起動するまでに時間がかかったり、処理速度があまりに遅かったりする場合は、オフィス内で行っている作業にPCのスペックがあっていない可能性があります。使用中にソフトウェアが頻繁にフリーズする場合など、スムーズに作業を進められない環境なのであれば、長期的に見てコストと作業効率のバランスが取れていないと判断して良いでしょう。
どのようなPCを選ぶべきかという問題は、オフィスでどのような作業をしているのか、その内容によって異なります。購入する際に社内のエンジニアに聞いたり、PCの購入店舗に聞いたりして、自社のオフィスにあったスペックのPCを揃えることが重要です。
セキュリティの整備
あらゆるデバイスで様々なデータのやり取りを行うようになると、その分、漏洩などのリスクが高まります。漏洩により被るリスクは、クライアントからの信頼を回復するための時間的な損失はもちろん、データの復旧や損害賠償など考えただけでも頭を抱えたくなりそうな大きなものばかりです。そのため、サーバー環境を整えセキュリティ対策を行っておく必要があります。
いつ、誰がどのデータにアクセスしたのかがわかるようにログを残したり、サーバーにアクセスできる人を制限したりと、セキュリティ環境を整えておきましょう。具体的には、社内サーバーでの情報共有が有効です。個々のPC内のメモリを圧迫しないだけではなく、PC自体の劣化抑制効果も期待できます。
また、VPNの構築もデータをやり取りする際のセキュリティ度を高めることができます。VPNは「Virtual Private Network」、つまり仮想専用ネットワークのことを言い、拠点間を通じる専用の通信環境を作り出すことで、外部からのアクセスを制限するものです。VPNを介する情報は暗号化されたうえ送受信されるため、社内情報の不正利用を防ぐ効果が期待できます。
IoT導入でオフィス環境は劇的に向上
IoTの導入で、オフィスのさまざまな場面において効率化を実現できます。いままで手作業で時間をかけてやっていたものが自動化され、仕事環境は劇的に向上します。ここでは、IoTがその力を発揮する代表的な例をみていきましょう。
事務作業の自動化
多くのオフィスで行われる作業の中には、データ入力や書類の振り分けなどといった事務作業が発生します。事務作業で発生するルーティン業務は、ロボットに業務内容を設定すれば、自動化することができます。事務作業を自動化すると、作業時間を短縮することができるだけではなく、人員を他の業務にまわせるため、人件費の削減も見込めます。
快適な空間への調整
IoTはあらゆるものをネットワークにつなげることができます。その特徴を活かし、オフィスで導入が進んでいるのが、空調の自動調整システムです。オフィスの温度や湿度を自動的に調整してくれるIoT製品を導入することで、作業を中断して空調の温度調整をする手間を省くことができます。
効率のよい作業動線の確立
センサーを社員に持ち歩いてもらったり、機械に取りつけたりすることで、人や機械の稼働頻度、通信デバイスの利用状況を可視化できるようになります。これらのデータをもとに、デスクや電子機器の配置、人員配置を行うことにより、もっとも効率の良い動き方を把握することができます。
オフィスを変える!IoTの導入事例
単にあらゆるものをネットワークにつなげるだけではなく、センサーを活用することで、IoTの効果を最大限に引き出すことができます。では、具体的にどのような活用方法があるのか、導入事例をチェックしていきましょう。
会議室利用状況の可視化
室内に無線の人感センサーを取りつけたり、社員にセンサーを持って行動してもらったりすることで、会議室の利用状況を可視化することができます。無線の人感センサーを使用する場合も、設置が簡単で工事がいらないため、低コストでIoT環境を作り上げることができます。
【ツール例】
・アジュールパワー株式会社
「Power IoT Platform 会議室活用ソリューション」
・株式会社日立ビルシステムズ
「会議室モニタリングサービス」
・株式会社ファンブライト
「会議室の利用を可視化」
社員の動きの把握
外回りの多い営業要員が多いオフィスや、フリーアドレス制を導入している環境では、社員にセンサーを持ち歩いてもらうことで、所在地の把握に役立ちます。また、社員の動きを把握することで動線確保に役立てることも可能です。
・パナソニック株式会社
「在席・所在管理システム」
・株式会社ジークス
「IoT for オフィス 屋内位置情報サービス」
トイレの利用状況
無線の人感センサーを取りつければ、トイレの利用状況を把握することもできます。大手百貨店では、ドアに開閉センサーを設置することで、トイレの空き状況を顧客に知らせるサービスを試験的に導入するなど、実用に向けた取り組みが進んでいます。
・KDDI株式会社
「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」
・株式会社バカン
「Throne(スローン)」
・株式会社ファンブライト
「トイレ IoT」
空調の管理
空調をIoT化することで、オフィス内を常に快適な温度や湿度にキープすることができます。温度や湿度の感じ方は個人差があるため、個人の裁量にゆだねることなく、自動的に温度・湿度管理をすることでオフィス環境を一定の範囲内にキープすることが可能です。
・ダイキン工業株式会社
「エアネット i サービスシステム」
・株式会社NTTファシリティーズ
「SmartStream」
・ユーピーアール株式会社
「IoTソリューション」
消耗品の管理
商品の下に敷くだけで、重量の計測や管理ができるセンサーを搭載したマットが開発されています。このマットを活用すれば、消耗品や倉庫管理している商品の在庫管理が容易になります。設定した重量を下回った場合はアラートを出すことができるため、在庫を切らすことなく発注作業に移すことが可能になります。
・スマートショッピング社
「スマートマット」
・アマゾン社
「Amazon Dash Replenishment」
出典・参照 :IOT NAVI「IoT導入でオフィスの生産性アップ!7つの具体例を紹介」
オフィスでIoTを導入する際の判断基準は?
自社のオフィスでIoTを導入すべきかどうかについては、単にコストカットができるという理由ではなく、事業の将来像から逆算して考えていくと良いでしょう。まずは、どのように事業を展開していくべきなのか、その先に何を期待しているのかを明確にします。それに伴い、障壁になっている問題やその解決策としてIoTが有効なのかなどを考えていくようにしましょう。
まとめ
IoTは今までインターネットにつながっていなかったモノをインターネットにつなぐことを言います。IoTを導入することで得られるメリットはたくさんありますが、まずは事業のビジョンを明確にしてIoTを導入すべきかというところから考えると良いでしょう。